マイクロRNAメチル化率測定による早期がんリスク検査
- 生命科学
microRNAは、他のRNAと同様に4種類の塩基で構成をされていますが、塩基はメチル化することにより分子量に変化が生じます。当社と共同研究チームは、高性能な質量分析計(MALDI-TOF/TOF)により、メチル化したmicroRNAを高精度に計測し、microRNAメチル化率が早期がんリスク検査に有効であることを明らかにしました。
当社のmicroRNAメチル化率を利用した早期がんリスク検査は、各種消化器がんの検出が可能であることに加えて、従来の技術では検出が困難であったステージI、IIの早期段階の膵がんを含む消化器系の難治性がんを高感度に検出することにより、早期発見、早期治療へつながると期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」(2019年8月19日)に掲載されています。 文献URL https://rdcu.be/bPO4k
また、共同研究による以下特許も取得しています。特許:第6980219号「がんを検出、又はがんの進行度を判定する方法」
体内にはDNAから合成される様々なRNAがありますが、このRNAは「micro」という名の通り短いRNAです。microRNAは細胞から血液中に放出されますが、がん細胞の特徴の1つとして細胞内における「メチル化」が促進されるという性質があります。このためがん細胞が放出するmicroRNAは”メチル化”している割合が高くなります。このがんリスク検査法では、これに着目し、microRNAの”メチル化率”を測定することで、その高低からがんのリスクを明らかにします。
RNAのメチル化は、メチル化RNAと結合する試薬、あるいは、RNAの分子量を直接測定することで可視化できます。当社では、高精度の質量分析計(Bruker ultrafleXtreme)を用いて、メチル化によって分子量が増加した”メチル化microRNA”を直接確認し、測定することが可能です。これ以外でもメチル化RNAと特異的に結合する試薬用いた方法によっても可能です。
このリスク検査は、早期発見が困難ながん種、CT/PETの検査でがんを見つけるのが難しい臓器にも対応しています。また、メチル化したmicroRNAはがんの寛解後に有意に
減少します。そのため、寛解後の再発がんも高精度に検出できます。
microRNAの量は、がん以外の要因、たとえば過度の運動、疲労、食事、体調、風邪などの疾患によっても変動することが知られています。このリスク検査では、microRNA自体の量的変化ではなく、”メチル化率”に着目することで、がん以外の要因による変動によって生じる誤った判断の可能性が低くなっています。
microRNAの量に基づいてがんを検出するとした検査法は他にもありますが、上記の通り体調や感染症によってmicroRNAの量が変動する可能性があります。また、尿、唾液、涙液からの分析では、それらが作られる臓器、組織から放出されるmicroRNAが多くなり、偏りが生じる可能性があります。この検査では、血液を採取して、血液中の”メチル化率”を測定するためこれらのリスクが低くなっています。また、全身を巡る血液を使用することで、全17種のがんで高精度に分析します。この検査では、血液を採取して、血液中の”メチル化率”を測定します。全身を巡る血液を使用することで、様々ながんを高精度に検出します。