【活動報告】第8回環境DNA学会山口大会 最優秀ポスター賞受賞
2026.04.24
河川水辺の国勢調査(以下、水国調査)により継続的に調査が実施されている3つの河川から、各河川につき3地点ずつ選定し、1地点あたり夏季と冬季に1回ずつ採水を実施しました。
環境DNA分析の対象は、水国調査で対象とする10の分類群とし、多分類群同時検出法で検出された種について、直近の水国調査によって捕獲又は目視で確認された種のうち、どれだけ検出しているかという割合(検出率)を比較しました。
その結果、両手法の一致する割合は分類群ごとに異なっており、脊椎動物(魚類、両生類、爬虫類、哺乳類、鳥類)は比較的検出率が高かったものの、無脊椎動物(水生昆虫、貝類、環形動物、甲殻類)と水生植物は検出率が低く、水国調査で確認された種の多くは環境DNAでは検出できていませんでした。
これは、水国調査が実施されるような大きな河川(一級河川)では、生物から放出された環境DNAが広範囲に拡散するため、バイオマス(生物の量)の小さい生物ほど採水容器にDNAが入る確率のばらつきが非常に大きくなることが影響していると考えられました。
実際に、調査を実施した3つの河川のうち、最も水面幅と水深が小さい河川では、他の2河川よりも検出率が明らかに高い傾向がみられました。
環境DNA分析は、簡便かつ迅速に生物多様性データを収集できる強力なツールです。
今回の学会では、受賞には至りませんでしたが、「パッシブエアサンプラーによる哺乳類、鳥類、植物の調査」では、電力を使わずに長時間の設置が可能なサンプラーを用いて大気中の環境DNAを集め、陸域の動植物を多数検出する技術を紹介しました。
近年、空気中の環境DNAを活用した生物多様性モニタリングは国際的にも注目されており、本発表は先端的な取り組みとして多くの関心を集めました。
また、「環境DNAメタバーコーディングを活用した沖ノ鳥島周辺海域の生物相調査」では、従来型調査の実施が困難な深海域における生物多様性調査の最新事例として、自律航行型水中ロボットYOUZAN(当社開発のホバリング型AUV)による観測結果と環境DNA分析結果を比較しました。
深海底資源開発のニーズがますます高まる中で、開発と生物多様性保全の両立が大きな課題となっていますが、深海生物のモニタリング手法の精度を比較した報告は限られており、本発表はその貴重な事例と言えます。
中村匡聡、白子智康、南野洋孝、生駒 歩、荒巻陽介(2025)マルチプレックスPCRを用いた環境DNA メタバーコーディングによる多分類群同時検出とその現場適用性、環境DNA学会第8回大会(山口)、P-54
白子智康、藤井太一、伊東茶宥、斎藤史之、養田勝則、山﨑 亨、安田朝香、山中裕樹(2025)パッシブエアサンプラーによる哺乳類、鳥類、植物の調査、環境DNA学会第8回大会(山口)、P-71
藤井太一、白子智康、横岡博之、杉島英樹、藤原義弘、吉田尊雄、河戸 勝、高月直樹、田岡 智、大野敦生、川島昇悟、高島創太郎、長野和則、桜井活人、長井 大、峯岸宣遠、木川栄一(2025)環境DNAメタバーコーディングを活用した沖ノ鳥島周辺海域の生物相調査、環境DNA学会第8回大会(山口)、P-26