人々の健康で快適な生活を支える
現代の便利で快適な日常生活は、多種多様な化学物質を利用することで維持されています。日本国内には、数万種にのぼる化学物質が、原材料や製品などの形で流通しています。1960年代に大きな社会問題となった水俣病では、私たちが利用する過程で排出された化学物質が人の健康に甚大な影響を与えました(水俣病は工場排水中のメチル水銀が原因)。近年、日本では、さまざまな対策の進展に伴って従来型の環境汚染や健康被害の発生は減少してきていますが、その一方で、生活習慣病やアレルギー疾患などは増加傾向にあります。その要因の一つとして、環境(水、空気、土壌など)や食品などを通した化学物質への暴露が注目されています。また、地球規模の環境変化やライフスタイルの変化に起因する感染症や疾病の増加も懸念されています。
現代社会における急速でグローバルな環境変化のなかで、人々の健康で快適な日常生活を守っていくためには、化学物質をはじめとする環境リスクを科学的に解明し、その低減につなげていくことが重要になります。
化学物質の健康や環境に対するリスクの解明と低減
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当社は、水質汚濁防止法が公布された1970年に東京の分析室で化学分析を開始し、以降、技術や精度の向上を図りながら、環境実態の把握に繋がる様々な調査・分析に対応してきました。国や自治体の依頼を受けた公共用水域での調査の結果は、その後の環境施策に反映され、環境汚染の低減や環境保全に役立てられています。1992年に開設した環境創造研究所では、最新の分析機器であった高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計を導入し、当時分析することが難しかった微量のダイオキシン類の分析方法を開発しました。その成果は、1998年に環境庁(当時)から公表された調査マニュアルなどに活用されています。とくにダイオキシン類のように生物蓄積性が高い化学物質では、健康リスクの解析や評価において人の体内の濃度を把握することが重要です。そこで血液・尿など生体試料の分析技術の開発に取り組み、国や研究機関が実施する化学物質のヒト健康に関する疫学調査・研究に積極的に参画しています。また化学物質の生物に対する毒性については、植物プランクトンや魚類など、さまざまな水生生物の反応をみる試験を行い、その結果から有害性を評価し、化学物質のリスク低減や管理などの対策に役立てています。
世界では、常に新しい化学物質が市場に投入されています。そのため、PFOSやPFOA(有機フッ素化合物の一種)のように新たに有害性が確認されるものもあります。これらの化学物質はPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)の対象物質に追加され、国際的な枠組みのもとで実施される環境モニタリングの対象となりました。当社は、このような課題に対応するため、さまざまな分析機器を導入し、新たな分析法や評価法を開発することで、広く社会に貢献いたします。また、化学物質の健康や環境に対するリスクへの対応は、グローバルな課題であることから、水銀に関する水俣条約に基づく途上国への技術支援、マイクロプラスチック分析の国際間協力など、国際プロジェクトにも積極的に協力しています。
安全で安心な健康生活の支援
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安全・安心で健康な生活の実現に向けて、当社では環境化学分野に加えてライフサイエンス分野への技術展開を進めています。食品分野では食品衛生法に基づく食品衛生登録検査機関として、食品の安全性などに関わる理化学検査や栄養成分・機能性成分の分析を行い、食の安全・安心につながるサービスを提供。医学・薬学分野ではタンパク質の網羅的解析(プロテオーム解析)やDNA・RNAの修飾解析など、最先端の解析技術を提供することで、大学や製薬メーカーによる疾病の診断・治療、創薬開発などを支援してきました。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に際しては、大阪と静岡の研究所を衛生検査所として登録することで、いち早くPCR検査を実施できる体制を整えるなど、安全・安心な社会のために貢献しています。
当社は、これまでに培ってきた環境化学分野における技術、経験、知識に加えて、最先端の遺伝子解析技術やAIによるデータ解析技術も活用し、グローバルな環境問題の解決と人々のより健康で快適な生活の実現に取り組んでいきます。